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2006-11-07 Tue 15:45
この物語は、「恋愛」について考えるものである。 マッチメイク・リミテッド(以後MML)という原案を学園用に書き直した演劇の話の番外編。 勝手な二次創作、公式とは一切関係が無い話。 MML2――周双(あまねふたつ)の視点から見た「恋愛」とは何なのか。 1 MMLJr.解散から二ヶ月が経過していた。 破天荒なリーダーの即決によって解散したものの、「恋愛」をすることなど早々出来るものではない。 あの結束の固いカップルだって、二年半は友達止まりだったのだから。 「ここか……?」 紙片にメモされた地図と目の前の建物を見比べ、眉根に皺を寄せて双は呟いた。 双は、解散してから間もなく転校することになった。 MMLJr.で得ていた収入で高校に通っていたため、奨学生制度を導入している高校に編入することになったのだった。 両親がいないため親戚の援助とバイトをするしかないのだが、親切な親戚が知り合いのアパートを紹介してくれた。 値段の割には、立地条件と大きさはさほど悪くない。 「えーと、大家さんに挨拶しなきゃな……」 独り言をまた呟く。自分の悪い癖だと思っていても、元来孤独を好む性分故、自問自答することがどうしても多くなってしまうのだった。 大家さん――神代勇気(かみしろゆうき)という男が、双の親戚の知り合いだった。 親戚から既に連絡は入っていて、双の面倒を見てくれるらしい。 アパートの階段を上がり、一番手前の部屋のドアのインターホンを押す。 「御免下さい、周双です」 数瞬の沈黙。 『ああ、今開ける――鍵が開いて三秒ほど経ってからドアを開けてくれ。それと、そのままリビングまで来てくれないか』 渋くて凛とした声がインターホンから聞こえる。 忙しい時に来てしまったか、と思いつつ鍵が開く微かな音の数秒後にゆっくりとドアを押し開ける。 ◇ ドアを開けると、昼間なのにお化け屋敷かと思うほどに、中は暗かった。 開いたドアの隙間から差し込む日光だけが、唯一といっていいほどの照明だった。 引きこもり、と脳裏に浮かんだ言葉を慌ててかき消し、中に足を踏み入れた。 ドアを開きっぱなしにしたい衝動を押しとどめ、おぼつかない足取りで廊下を壁伝いに歩く。 さほど広くないからか、少し歩くとリビングと思われる場所にたどり着いた。 しかし、そこで双は再び驚愕に足を止めた。眼を丸く見開き、間抜けに口を半開きにした。 分厚い黒の遮光カーテンで窓は覆われ、カーテンの下も目張がされて完全に日光が遮断されていた。 それでも視界が利いたのは、ひとえにセンターテーブルに置かれたデスクスタンドが煌々と無機質な白い人工的な光を放っていたからだった。 「すまんな、君が双か。話は聞いている、私が神代勇気だ」 インターホンよりも、生だけに一層凛とした明朗な、それでいて渋い低めの声が双を迎えた。 双は、一瞬躊躇した後、おずおずと頭を下げた。 神代の部屋の常軌を逸した様相、そしてその格好が酷く現実離れしていたのが原因だった。 茶色の野暮ったい短髪――男性にしては長めのそれに、背筋が伸びた堂々たる佇まい。意思の強そうな、髪と同色のやや太目の眉が特徴的だった。 ただ、何を考えているのか、そして年齢が読めなかった。目元を覆い隠す、濃い黒のサングラスのせいだった。 一見すると、やや真面目な印象を受けるものの好人物に見えるのに、このサングラスが何やらつかみ所がないように見えたのだった。 「これからお世話になります――宜しくお願いいたします、つまらないものですが」 菓子折りをやや義務的に差し出すと、神代は眉を少しだけ上げ、苦笑した声で答えた。 「まあ、これから長い付き合いになるんだ、そこまで気を使わなくてもいい」 そういいつつも、しっかりと手にして箱を眺めているところは、ちゃっかりとしている。 中身は北海道限定名菓・白い恋人。ホワイトチョコをサンドしたシンプルなクッキーである。 「暗くてすまんな、私は網膜が極端に弱っていて、日光を眼に入れると数日間は高熱を出して寝込むものだから――」 こんなに遮光しているんだ、と仕草で示す神代。つまり、夜間しか外出できないのだろう。 パッと見引きこもりだが、昔は探検家として第一線で活動していたというのだから、何やらかわいそうな気もしないでもない。双は思った。 「まあ、何かあったらいつでも来てくれ」 神城が差し出した手を、双は握り返した。 現段階で、双は知る由もなかった。 彼との出会いが、自分に思わぬ騒動を巻き起こすことの始まりになるとは。 |
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| 灰色注意報 |
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